こんにちは。野中やすおです。
毎日のように様々な情報がツイッターなどのSNSで流れていますが、ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに日本でも「べリングキャット(bellingcat:鈴がついた猫の意)」というイギリスに本拠を置く調査報道ユニットが急速に注目を集めるようになりました。
ベリングキャットは、一般に公開されている情報=オープンソースを使って情報の真偽を確かめて情報のシェアを行う有志のアマチュアの集団です。そんないうなれば素人集団が、大手メディアや各国の諜報機関すら超えるスクープをあげ、実績を残し、世界中から今注目を集めています。
本書は『ベリングキャット』の創始者であるエリオット・ヒギンズが執筆をしています。著者は、大学を中退し仕事に興味を持てず、くさってオンラインゲームに没頭していた時期もある、いわゆる大学でジャーナリズムを学んできた正義心の強いエリートとは一線を画す存在です。
きっかけは、「アラブの春」の動画を見た時だったそうです。そこからインターネット上の仲間達とオープンソースを使った、これまでにない調査方法を磨き上げてきました。
ロシアの例をみるまでもなく、日本でもそうですが世界中の国家や権力者は平然と虚偽情報を垂れ流します。インターネットや情報技術というのは、一市民が世界中に流れる情報に瞬時にアクセスできる自由を手に入れた一方、偽情報やプロパガンダを流すことで民衆を混乱させ、権力者や国家の力をますます増大させる役割も果たしてきました。
情報操作という武器を手に入れた国家や権力者に対して普通の市民がどうやって立ち向かっていくか、その参考になるのが本書です。
ベリングキャットが活用するのはあくまでSNS上などにある公開情報のみで、フェイクもプロパガンダもリークもある玉石混淆のネット上の情報の中から真実に辿り着くその手法に大きな可能性を感じました。
ただし、訳者があとがきにも述べているようにベリングキャットの手法は真実を探すだけでなく、悪い方にも応用できるし、本書中著者は政治的に中立であると再三述べていますが、本当の中立などありはしないし、一歩使い方を間違えるとさまざまな危うさを孕むものではあります。
ただし、日本でもこうした手法(オープンソース情報を使った調査、OSINT)がもっと活発に出てきて欲しいと思うし、私自身こうした手法をもっと勉強していきたいと思っています。